弁護士費用特約における源泉徴収の扱い

最近は交通事故案件をお受けする機会は以前より少なくなり、受任するとしてもLAC経由のものが中心となっています。

件数自体は落ち着いているものの、報酬や実費の支払い段階になると、よく出くわす問題があります。

保険会社によって弁護士報酬・実費の源泉徴収の取り扱いが異なるという問題です。

損保各社の源泉徴収パターン

各損保会社の対応を整理してみると、大きく分けて以下のパターンに分類できます。

パターン1:源泉徴収をしない

  • 保険会社から支払われる際、源泉徴収はされません(ただし、依頼者が法人の場合は源泉されます)。
  • 東京海上がこれです

パターン2:源泉徴収をする

これは更に以下のように枝分かれします。

  • パターン2-①:弁護士報酬のみ源泉徴収する
    最も一般的なパターンです。ただし損保会社によって温度感には差があり、当然のように「源泉します」という姿勢の会社もあれば、「どちらでもいいので弁護士側で決めてください」と委ねてくる会社もあります。
  • パターン2-②:弁護士報酬と実費の両方を源泉徴収する
    • 2-②-(1) 実費を含めたすべての支払額を源泉徴収する
      これはとあるネット損保で経験しました
    • 2-②-(2) 実費のうち特定の費目だけを源泉徴収する
      これは過去に1社だけ経験しています。詳しく確認すると、予納郵券、謄写費用、内容証明、配達証明、住民票・戸籍謄本、印紙代のみを対象外とし、それ以外の実費は源泉対象にするというルールでした。

そもそも源泉なしが正解では?

個人的には、パターン1(源泉徴収をしない)の解釈が正しいのではないかと考えています。

というのも、保険会社が弁護士に対して事件の処理を依頼しているわけではありません。保険会社から弁護士へなされる支払いは、弁護士業務の対価(報酬)そのものではなく、弁護士報酬相当額の保険金です。

本来的には、保険契約者(依頼者)へ支払われるべき保険金を、利便性のために保険会社から弁護士へ直接振り込んでいるに過ぎません。

したがって、この支払いは所得税法204条1項2号が規定する「弁護士等・・・の業務に関する報酬又は料金の支払い」には該当しない、と解釈するのがよい気がしています。

東京海上は、個人依頼者の場合は源泉せず、法人依頼者の場合は源泉するという処理を行っているのは、この解釈を前提にしているからだと推察されます。

実費まで源泉?

百歩譲って、保険会社からの支払いが所得税法上の「報酬」にあたるという前提に立ったとしても、パターン2-②のように「実費」まで源泉徴収されるのは、実務感覚として違和感があります。

弁護士にとって実費は、あくまで依頼者からの預り金であり、自らの収入ではありません。

この点は、国税庁のウェブサイトにある「実費弁償金の課税」に関するQ&Aで以下のように整理されています。

  1. 原則として、弁護士業務の遂行に関連して受ける一切の金銭が源泉徴収の対象となる。
  2. 宿泊費や交通費などの実費弁償であっても、ホテルや交通機関への支払いが「依頼者による直接払い」と実質的に認められない限り、源泉徴収の対象となる。
  3. ただし、依頼者が本来納付すべきものであり、弁護士側で報酬と明確に区分経理している場合は、課税の対象とならない。

通常の弁護士事務所であれば、実費は預り金として報酬口座とは明確に区分経理しています。したがって、上記3の要件を満たすため、実費が源泉徴収の対象にならないのではないかというのが、個人的な整理です。

依頼者へ直接請求をするとどうなるか

なお、弁護士が報酬・実費を依頼者へ直接請求し、依頼者が損保会社へ保険金として請求するという形をとれば、保険会社が弁護士へ直接支払うわけではないため、源泉徴収をしてくることはないのでしょう。

とはいえ、依頼者に振込や請求の手間をかけさせるのも心苦しいため、私はこの処理を行っていません。結果として、各社のバラバラな処理に付き合っているのが現状です。

理屈はともかく統一してほしい・・・

本音としては、源泉する・しないのどちらでもいいので、とにかく業界全体で扱いを統一してほしいということに尽きます。

案件ごとに、「この損保はどのパターンだったっけ?」と確認し、請求書の書き分けや会計処理の調整を行うリソースが非常にもったいなく感じています。

せめてLACに加盟している損保だけでも、扱いを統一してほしいものです。

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