著作権を侵害された際、最も困難なハードルが損害額の立証です。
著作物は無体物であり、侵害されても形が残るわけではありません。 そのため、本来得られたはずの利益(逸失利益)を証明する必要がありますが、これは中々に難しいのです。
そこで著作権法114条は、損害額を算定しやすくするための「特則」を設けています。 本記事では、最新の令和5年改正を踏まえ、1項から5項までを個別に解説します。
1. 第1項:販売数量に基づく算定
1項は、侵害品が売れた数量に、権利者の「単位あたりの利益額」を乗じて算出する方法です。
令和5年改正による変更
これまでは、権利者の販売能力を超える数量については、因果関係がないとして切り捨てられていました。
しかし、これでは大規模な海賊版被害を十分に救済できないという問題がありました。
改正後の算定ルール:
- 能力内の数量:単位あたりの利益額 × 数量。(1項1号)
- 能力を超える数量:ライセンス料相当額として合算請求が可能。(1項2号)
これにより、自社の供給能力を大幅に超える侵害に対しても、取りこぼしのない請求が可能となりました。
限界利益
1項1号でいう「利益」は『限界利益』を基準にすべきと考えられています。
限界利益とは? 売上高から、製造原価や配送費などの「変動費」のみを引いた額です。 社員の給料や家賃などの「固定費」は差し引きません。
もっとも、権利者が自社の利益率を明かしたくない場合には使いにくところです。
2. 第2項:侵害者の利益による損害の推定
2項は、侵害者が得た利益を、権利者の損害額と「推定」する規定です。
「利益」は限界利益
侵害者の利益を計算する際も、売上から変動費のみを控除する『限界利益』の考え方がとられます。
ただし、1項は権利者側(自社側)の限界利益を立証すればよかったですが、2項では侵害者側の限界利益を立証することなるので、証拠の偏在から立証ハードルは高いとの指摘もあります。
3. 第3項及び5項:ライセンス料相当額の規範的認定
3項は、本来受けるべきライセンス料(使用料)を損害額とする規定です。
「通常」という文言の削除
3項のライセンス料の算定については、既存のライセンス料相当額と同額であるとの見解もあれば、「通常」という文言が削除されたのであるから、既存のライセンス相場よりも、著作権者に有利な判断が可能であるとの見解も存在していました。
これについては、改正により、5項が追加され、単なる相場ではなく「侵害があったことを前提として」交渉した場合に決まるであろう額を考慮できることが明文化されました。
ポイント:侵害し得の防止 発見されない可能性や訴訟にならない可能性も勘案すると、金銭面だけからすれば、無許諾で利用し違法行為が露見したら支払うほうが得策という状況になるため、これを防ぐため、3項及び5項により、通常の契約価格よりも上乗せした額を裁判所が認定できるようになりました。
4. 第4項:管理事業者の規程活用と過失の参酌
令和5年改正で新設・整理された規定です。
- 管理事業者の使用料規程: JASRACなどの管理事業者が定めている「使用料規程」を、損害算定の客観的な根拠として利用できます。
- 3項の解釈でも同様の額を認定するとの解釈は可能でしたが、4項を設けたことにより,より明確になったと評価されています。
まとめ
著作権法114条については、令和5年改正を経て、権利者の保護はより多層的なものとなりました。
本記事の総括:
- 1項:販売能力の壁を越えた合算請求が可能に。
- 2項:損害=侵害者の(限界)利益との推定。
- 3項・5項:侵害前提の高めのライセンス料の認定を明文化。
- 4項:管理事業者の規程活用を明文化。
適切な損害賠償を請求するためにも、具体的あ事案に応じて、どの項を選択すべきか検討する必要があります。
「侵害された作品の正当な対価を取り戻したい」 「相手に提示する賠償額の適正な計算を知りたい」
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