「個人事業主として働いているが、借金が返済できず破産を検討している。
ただ、管財事件になると最低でも20万円以上の予納金が必要と聞いて不安……」
このような悩みを持つ方は少なくありません。
一般論として
「個人事業主の破産=管財事件」
と言われることが多いのは事実です。
しかし、事業者であっても「同時廃止」になるケースは存在します。
この記事では、
- なぜ個人事業主は原則「管財事件」なのか
- どのような場合に「同時廃止」が認められるのか
- 実務上、裁判所が重視する判断ポイント
を、弁護士実務の運用基準ベースで分かりやすく解説します。
原則:個人事業主の破産は「管財事件」になる
裁判所の基本的な考え方
裁判所の実務運用では、
「個人事業主(元事業主を含む)の破産は、原則として管財事件とする」
という考え方が採られています(『破産申立マニュアル〔第3版〕』361頁)。
その理由は主に以下の3点です。
① 事業用財産の調査が必要になる
個人事業では、
- 在庫
- 機械・設備
- 売掛金
- 事業用口座
などが存在することが多く、
私的財産との区別が曖昧になりやすい傾向があります。
このため、第三者である破産管財人による調査が必要と判断されやすくなります。
② 取引関係の清算が必要になる
事業を行っている場合、
- 取引先
- 下請業者
- 従業員
といった第三者との法律関係が存在します。
これらを公平に整理するため、
裁判所は管財人を選任する可能性が高いと言えます。
③ 不正・偏頗弁済の有無を確認する必要がある
事業者の場合、破産直前に
- 特定の取引先だけに返済している
- 在庫や資産を処分している
といった行為が行われていないか、
慎重な確認が求められます。
例外:個人事業主でも「同時廃止」になるケース
もっとも、以下のような場合には、例外的に同時廃止が認められる可能性があります。
ケース① 実態が「給与所得者」に近い場合(一人親方など)
形式上は個人事業主でも、
実態が会社員とほぼ変わらない場合です。
具体例
- 従業員を雇っていない
- 在庫・高額な設備がない(工具程度)
- 売掛金・買掛金がほぼ存在しない
- 特定の会社から継続的に報酬を受け取っている
このような場合、
事業性が低く同時廃止が選択される余地があります。
ケース② 事業用資産が存在しない、または無価値な場合
事業に関する資産が、
- すでに処分済み
- 換価価値がない
ことが客観資料で説明できる場合です。
実務で重要なポイント
- 在庫・設備が存在しないことを写真等で説明
- 売掛金が回収不能である合理的理由
- 事業用口座に残高がないこと
申立書において、客観資料により合理的説明が十分になされていれば、管財人による調査までは不要と判断される可能性が高まります。
ケース③ 廃業済みで、負債が生活債務中心の場合
すでに廃業しており、
- 店舗・事務所を明け渡している
- 事業上の取引債務がほぼ残っていない
というケースです。
同時廃止に近づく条件
- 廃業から一定期間が経過している
- 借金の大半が生活費目的の借入
- 取引先トラブルが存在しない
やはり、申立書において、事業者としての実態が消失していることを、客観資料により合理的説明が十分になされていれば、管財人による調査までは不要と判断される可能性が高まります。
以前、元々個人で飲食店を営業していたものの、高齢となったが、形式的には廃業届を出していないというケースで、昔なじみの客の2,3人がたまに訪れた際に軽食を出している程度で売上も極小かつ価値のある機械・設備も皆無といった事情を主張立証し、廃業と同視できるとして同時廃止となったケースがありました。
同時廃止を目指すために必要な準備
自営業者の場合は、原則として同時廃止は認められません。
ただし、
「破産管財人による調査が不要である」
と合理的に説明可能なケースであれば同時廃止となる可能性はあります。
このとき、弁護士による丁寧な検討と書面化が極めて重要になります。
まとめ|個人事業主でも同時廃止の可能性はある
- 個人事業主の破産は原則「管財事件」
- しかし、既に廃業し、
- 負債額が多額でない
- 取引先が少数
- 負債は生活費のための借入中心
- めぼしい資産がない
このような場合は、同時廃止となる可能性があります。
どうせ事業主だから管財事件になると諦める前に、
一度、専門家へ相談することが重要です。
